ゆとりーなの日記

日記的な事を書いて行くと思はれる

「訊く」つて戰前本當に主流ぢやなかつたのか

この間私の中で「質問して下さい」的なニュアンスで、「訊く」と「聞く」どつちを使はうか迷つたと云ふ事案がありました。その時は結局「訊く」だと訊問からの問い詰めるつぽくてあれかなと思つたので結局無難な方の「聞く」を選んだのですが、これを機に今囘はこの話に就いて觸れて置かうとかさう云ふ話です。
時たま聞かれる話に「訊く」が「訊く」の代用字と云ふ話があります。漢字書分け厨の私がいかにも飛び附きさうな話です。折角手元に戰中の辭書があるのですから引いてみることにしませう。
最初に登場する辭書は(といつても2册しかないのですが)昭和17年發行の「辭苑」と云ふ國語辭典です。これは後の広辞苑の元となる辭書らしいです。早速「きく」を見てみると、「聞く」と「聽く」しか見出しにありません。「たづねる、問ふ」みたいな意味は「聞く」に含まれてゐます(ついでに周圍を見た所、現在それなりに見かける效果があるみたいな意味での「效く」も見當たりませんでした。その代はりにあつたのが「利く」です。)。
次に(と云ふか最後)に登場する辭書は昭和18年發行の「新字鑑」と云ふ漢和辭典です。音訓索引で「きく」を引いてみるとある字は「利」、「聞」、「聴」、「聽」の4字です(因みに「聴」は「聽」の俗字として載つてゐます。現在の常用漢字と同じ字形が俗字として收録されてゐる事例は結構あつたりします。)。こちらでも「訊」と云ふ字はありませんでした(ついでに言ふと「效」も)。又、實際の「訊」の頁に行つても矢張り「きく」と云ふ訓讀みの表記はありません。
これだけ見ると、「訊く」と云ふ表記はそこ迄當時でも一般的ではなかつたのではないかと推察される訣です。因みに現代で主流な「尋問(じんもん)」は辭苑に於いて「訊問(じんもん)」しか記載がなかつたりしますが、新字鑑に於いては「尋」の熟語例に「尋問」があつたりするので、これも戰後突然出現した代用字なのかどうかは微妙なラインかもしれません。
まあ何れにしても、何でもかんでも代用字のせいにして嘆くのは辭書を引いてからでも遲くはないぞとかう云ふ話でした。
參考「なぜ広まった? 「『訊く』が正しい」という迷信 - アスペ日記